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数値解析学と計算機シミュレーションを研究しています
数値解析学や数値シミュレーションは,現代の科学技術を支える強力な数理的なツールとして,今大変注目されている研究分野です.応用数理研究グループではこれらを用いて,計算機科学と数理科学の境界領域の数理モデルを研究しています.計算機の中に「社会(artificial
societies)」を作って,その中に仮想的な人(agent)を住まわせて,会社やその他いろいろな組織の中で日々の生活をさせます.その仮想的な社会(artificial
society 人工社会)に新型インフルエンザのような疫病や災害や経済危機を起こして,何が起きるかを観察します.このような新しい数値シミュレーション技法は,最近は工学でもよく利用されていますが,その数学的基礎理論は,未だ十分に解明されていません.数値シミュレーション技法の数学的基礎理論の解明を行うことにより新しいシミュレーション技法やシミュレーターの開発を行うことが,応用数理研究グループの目標です.
我々のグループをよく理解してもらうために、Q&Aの形にまとめてみました。「これはなかなか面白そうだ!」とか「自分に合ってるかも?」と思った皆さんは下の方の研究テーマ別の詳しい説明(長くて読むのが大変ですが)も読んでください。読んでみて何か分からないこと,もっと詳しいことが知りたくなったら,スタッフのだれかに気軽にメイルください.
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Minoru TABATA
Naoto YAMAOKA
Tatsuki KAWAKAMI
Q:学生研究室の研究環境はどうですか?
A:学生一人に1台のWindowsXP,WindowsVista,Windows7のデスクトップパソコンが利用できるようになっています.マシン本体は数値計算を行うには十分なスペックを持っています.統合開発環境はVisual Studio 2008が入っています.2005年度発足したばかりの研究グループですが、学生研究室の研究環境は最優先で整備しています.B11(旧工学部7号館)3階の309の奥の2部屋が学生研究室になっています.いつでも見学歓迎します.気軽に来てください.今居る学生諸君に「どんな研究室ですか?」と聞いてみてください.
Q:応用数理研究グループの研究テーマは?
A:応用数理研究グループでは計算機シミュレーションと偏微分方程式論を中心とする数学を研究・教育しています.理論系研究テーマとしては楕円型偏微分方程式の解構造の解明,変分問題と楕円型偏微分方程式,楕円型偏微分方程式の振動理論,放物型偏微分方程式の解の性質(時間大域的な挙動の解明)及び非線形偏微分積分方程式論を研究しています.また,応用系研究テーマとしては,シミュレーション工学(エージェント・ベースド・シミュレーション),数理疫学,数理生態学,数理社会学(人口移動論)を研究・教育しています.
Q:セミナーはどんなふうにやってますか?
A:4年生は先ずは計算機プログラミングでまだまだ学ぶことが沢山あるので,週に1回計算機プログラミングの実習のセミナーを受けてもらいます.これ以外に人工社会理論の基本的な教科書を輪講するセミナーを週に1回出席してもらいます.週に2回のセミナー出席が義務付けられていると思ってください.
Q:応用数理研究グループ所属学生の就職状況はどうですか?
A:応用数理研究グループは2005年度初めて発足した研究グループですので就職実績は多くはありません.2005年度は高校教員2名,総研系企業1名,大学院進学1名でした.2006年度は総研系企業1名,大学院進学4名でした.2007年度は総合商社1名,総研系企業1名,大学院進学4名でした.2008年度はゲームメーカー1名,コンサルタント企業1名,教職1名です.今年度までの進路は高校教員,一般企業(SE),ソフトウエア、ゲームメーカー(コナミ,カプコン),金融損保系企業(アクサ、ソニー損保),外資系コンサル(アクセンチュア),通信会社(NTT西日本),シンクタンク(日本総研),総合商社(三菱商事),大手電気メーカー(日立製作所、デンソー)等への就職や大学院進学と様々です.
現在6名の学部4年生と6名の院生の諸君が研究に励んでいます.12名と少し大所帯です(^^;)。
Q:1年間の予定はどうなっていますか?
A:4月には机の割当と研究室の大掃除と,お約束の歓迎会があります。机とイスのほとんどは2005年度購入の新品です。5月と6月は応用系研究テーマ希望の学生諸君には基礎的なプログラミング技法を集中的に復習してもらいます。特に数理の諸君は計算機プログラミングが苦手だという人が多いので,みっちり基礎的な学習をしてもらいます。7月には卒業研究テーマを決めて2,3ヶ月かけてテーマに沿ったテキストや学術雑誌に掲載された論文を輪講します.8月下旬は,修士論文中間発表会と大学院入試のお疲れ慰労会を行います.今年は人工社会と人工社会構築指南の輪講をしています.この輪講を通してエージェント・ベースド・シミュレーションの基礎を学んで貰います.8月下旬には大学院入試(8月25日−26日)と修士論文中間発表会(8月21日)の慰労会があります.12月には大掃除と忘年会を予定しています.例年2月20日前後が卒業論文・修士論文の発表会です.1月と2月は追い込みで大変忙しい時期になると思います.
Q:現在所属の学生の皆さんはどんなテーマを研究していますか?
A:4年生の研究テーマと修士の諸君の研究テーマは,このリンク先にあります.
下記の2つのセミナーが同時並行で行われています.
(i)数値計算アルゴリズムの計算機への実装技術の習得セミナー
(ii)エージェント・ベースド・モデルの構築(計算機への実装)とその数学的基礎理論のセミナー
Q:大学院進学を考えていますが,どんな勉強をすれば良いですか?
A:大学入試とは違って特別な受験勉強は必要ありませんが,大学院入試の過去問を調べたり,院生の先輩に試験についていろいろ質問してみると良いでしょう.大学の研究室は先生から習うことと同じくらいに先輩から習うことが多いものです.応用数理研究グループの院生研究室はB11の3階の309の一番右奥の部屋です.気軽に質問してください.
Q:卒業研究の発表会はいつ頃ですか?
A:卒業研究発表会日時:2011年2月15日(火)9:30より,会場:B5棟(物質系新学舎)1階1B―38 講義室です.修士論文発表会は翌日の2月16日(水)です.関心のある皆さんは是非参加してください.
2012年の重要な締め切りは下記のとおりです。
1月31日(月):修論・卒論タイトル(学科用)締め切り
2月7日(月):修士論文本体(審査用)および要旨(学内用)提出(学内締め切りは2月10日)
卒研・修論発表会日程:2月15(火),16(水).B5棟1F教室を予約済み
3月4日(金):数理保管用修論原稿提出締め切り。
Q:プログラミングが苦手なんですがこの研究室に行って大丈夫ですか?
A:研究室の研究テーマは大きく理論系と応用系の2つに分かれています.理論系の研究には計算機はほとんど必要になりませせん.計算機が嫌いという人で理論的なことを勉強したい諸君は歓迎します.またプログラミングが苦手だけど、頑張って得意になりたいという人も歓迎します.
Q:このグループで勉強することを希望していますが,どんな科目を履修していれば良いでしょうか?
A:数理工学の数学系の科目を中心に履修していればそれで結構です.応用的な研究に関心がある場合でも,数学の基礎的な勉強は欠かせません.基礎を疎かにしないように勉強してください.数理解析講座(1グループ,2グループ,3グループと7グループの数学)は共同で勉強会(アクチュアリー勉強会,情報処理資格勉強会,教員採用試験勉強会,TOIEC勉強会)を開いています.運営は数理解析講座所属の学生諸君が中心ですが,講座全体で活動を応援しています.
Q:セミナーの予定はどうなっていますか?
A:2011年度の予定は学年別にはまだ決まっていませんが、このページで予定を発表します.
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我々のグループの研究テーマは相互に密接に関係していますが、大きくは理論系研究テーマと応用系研究テーマに分かれます.
もっと進んだ研究テーマを知りたい諸君は,こちらへどうぞ.
理論系研究テーマ
理論系は主に山岡と川上が担当します。数理モデルを数学的に記述する言葉として、(偏)微分方程式がありますが、その偏微分方程式の解のもつ性質を理論的に解明することを目標にしています。応用数学(II)において、波動方程式、ラプラス方程式、熱伝導方程式を学んだと思いますが、それらの解法の底流にはフーリエ級数展開があったことを思い起こしてください。フーリエ級数展開は、20世紀の初めから新たな展開を見せて関数解析へと発展していき、偏微分方程式の解を関数の作る線形空間の中で探す、という方法が生まれてきました。この方法は、関数解析と呼ばれ、数学の一分野を築くまでに成長しています。20世紀の後半には、関数空間の深い理解と相まって、線形偏微分方程式の理論はかなり確立してきました。しかしながら、非線形方程式は、より現象を正確に記述しているにもかかわらず、発展が遅れてきました.漸く、20世紀末から現在にかけて、球状星団の重力分布を記述する松隈方程式、レーザー光線の集中現象を記述する非線形シュレディンガー方程式、草食動物と肉食動物の個体数密度に関する数理モデルであるロトカ=ヴォルテラ方程式などの解の性質がわかりかけてきているところです.
理論系分野では、関数解析という枠組みで、これらの数理モデルを記述する(偏)微分方程式の解の性質を調べることを行っていきます。場合によっては、応用系と連携して、数値計算を行っています.自然現象を記述する数理モデルを扱って、新しい発見をすることを目指しています.
なお、この分野には賞金のかかった未解決問題があります。地球上の大気の流れを記述するナヴィエ=ストークス方程式というものがありますが、この方程式の長時間の解の存在は未だに理論的には証明されていません。これがわかれば、地球上の天気は未来永劫予報可能(というと大げさですが)となり、さらに10^6$の賞金がもらえます。これに取り組むには、残念ながら学部4回生の期間だけでは短すぎますので、大学院への進学が必要条件となります。が、それでも、期間は短すぎる問題かも知れません.
以上は簡単な説明で,ここから少し専門的な話になります.偏微分方程式は自然現象を理論的に記述する大変有力な言語です.学部課程においては,波動方程式,ラプラス方程式,熱伝導方程式を中心に偏微分方程式論の初等理論を教授していますが,それらはフーリエ級数展開等の古典的な方法を基礎としていました.大学院工学研究科においては,フーリエ級数展開を萌芽とする,20世紀に確立された関数解析という枠組みで,これらの自然を記述する偏微分方程式の解の性質を調べる研究(解の構造の研究)を行います.また,状況に応じて数値解析の基礎理論を教授し,補助的な手段として偏微分方程式の数値解法による視覚化を行います.しかしながら,基本的な研究手法としては数値計算を伴わない関数解析的手法を取り上げ,その方法に従って,偏微分方程式論の現代的理論を教授・研究指導します.具体的には次の4つのテーマを研究指導します.
1.
楕円型偏微分方程式の解構造の解明(楕円型偏微分方程式の解の構造を,分岐理論の手法やその他の手法を用いて,大域的且つ数学的に解明する研究)
A)
変分問題と楕円型偏微分方程式(変分構造を持つ楕円型偏微分方程式の解と,汎関数との関係を明らかにし,解の性質を調べる研究)
B)
力学系と楕円型偏微分方程式(常微分方程式系の解の構造を利用し,楕円型偏微分方程式の解の性質を調べる研究)
C)
楕円型偏微分方程式の振動理論(無限遠点の近傍における楕円型偏微分方程式の解の零点を調べる研究)
2.
放物型偏微分方程式の解の時間大域的な挙動の解明
3. 非線形偏微分積分方程式論(統計物理学の偏微分積分方程式の関数解析的研究)
4.
関数解析学(関数空間の持つ性質とそこでの収束列の研究)なお,希望があれば双曲型偏微分方程式の理論(特異性の伝播)に関する研究指導も行います.
応用系研究テーマ
主に田畑が担当します。計算機シミュレーション技法と数理解析的方法は,20世紀の自然科学分野の様相を一変させ,今日では自然科学の研究に必要不可欠の道具となっています.しかし現実の人間社会を取り扱う社会科学や公衆衛生学等に目を転じるなら,これらの方法はまだ十分に活用されているとは言えません.経済学などの定量的社会科学に限っても,対象になる個体(agent)が自然科学とは比較にならないほど複雑な挙動をすることが,困難さの原因のひとつだと考えられています.このような社会現象を数理モデルを用いて表現し,数値シミュレーション技法や関数解析的方法を応用することによってモデルを解析することがグループの研究目標です.詳しい内容を具体例を挙げて説明しましょう.
(1) 数理疫学.
中国を中心に世界的な規模で猛威を振るったSARSの感染者が地理的にどのように広がっていくのか?,東南アジアを中心に現在流行している鳥インフルエンザ(H5N1)が突然変異によりヒトからヒトへの感染力を獲得した場合,感染者が地理的にどのように広がっていくのか?,性感染症としてのエイズウイルス(HIV)は最終的にはどの程度の感染者が発生してしまうのか?,都市中心部にバイオテロによって天然痘ウイルスが散布された場合どのような被害が発生するか?,さらにこれらの伝染病の感染爆発を防ぐ為にはどのような防疫措置を取ればよいのか?これらの問題を解決することは公衆衛生上極めて重要な問題です.問題解決のために数理モデルを構築し,モデルの計算機シミュレーションを行ったり関数解析的手法を使って解の性質を調べることが必要になります.また近年若年女性の感染率が急激に高くなって問題となっているクラミジア性感染症は無症候感染が多く,感染期間が長引けば合併症として深刻な不妊症をひき起こします.現在日本の出生率は危機的な水準にまで低下していますが,クラミジアの若年層での蔓延は女性不妊症患者の大量発生をひき起こし,ひいてはこの低い出生率をさらに大きく押し下げると考えられています.クラミジア性感染症の感染と不妊症の関係は,感染者の結婚,不妊症治療受診/妊娠によって感染が確認されることが多いことから,必然的に時間遅れ(感染と診断の時間の遅れ)の効果を持ち,対象者のライフサイクルの年齢構造の離散力学系とみなされます.これについても,数理疫学モデルを構築し,その計算機シミュレーションと数理解析的研究によって,将来の感染者数の予測や防疫措置の検討とその費用対効果のアセスメントをすることができます.
(2)エージェント・ベースド・モデル.
これらの複雑系の現象は大変興味深いものですが,同時に解析が大変困難なもので,現象をミクロレベルで捉えるかマクロレベルで考えるかによって使われる数学的な道具は大きく違ってきます.現象をミクロレベルで記述する為には,結局はエージェント・ベースド・モデル(agent-based
model, ABM)によって現象を表すことが必要になります.例えば伝染病の感染現象をABMを用いて研究するには,計算機の中に一つの集落(場合によっては複数の集落)を作りagentと呼ばれる小さなオートマトンを住まわせ,お互いに確率的な法則に従って接触させ,感染がどのように広がっていくかを数値シミュレーションし,一般的な法則を予想しその結果を数学的に証明することになります.また人口移動現象をABMを用いて研究するには,計算機の中に一つの国家(場合によっては複数の国家や地域)を作りagentを住まわせ経済活動の活発な地域への移住を試みるようにプログラムし,その結果agentがどのように広がっていくかを数値シミュレーションし,一般的な法則を予想しその結果を数学的に証明することになります(パソコンゲームのシムシティーをやった人なら,ABMは自律的に動くシムシティーと呼ぶべきものだと気が付くでしょう).数理社会学ではABMは都市における人口移動現象を解析するには不可欠のシミュレーションツールになると予想されていますが,その詳しい数学的な基礎理論は未だ未解明のままです.
(3)スケーリング・リミット.
しかしこのようなエージェント・ベースド・モデルは通常モデルを構成するエージェントの総数が統計的処理を要するほどに大きい為,通常の計算機シミュレーションで漸近挙動を調べることが大変困難です.我々はこのエージェント・ベースド・モデルを直接計算機シミュレーションする方法も勿論用いますが,同時にモデルのスケーリング・リミット(エージェントの総数を無限大にし,各エージェントがモデル全体に占める割り合いを無限小にする極限)を取って非線形の関数方程式(master方程式と呼ばれる統計力学にも現れる非線形偏微分積分方程式)を導きだし,その関数方程式を関数解析的及び数値解析的に研究する必要があります.また現象をミクロレベルにまで降りないで直接マクロレベルで考える場合は,非線形の関数方程式(master方程式)によって現象を記述し,関数解析的手法と数値解析的手法を用いて解の性質を明らかにする方法を用いる必要があります.
(4)最後に.
これらの研究は関数方程式論の研究としても,大変意義深いことです.また得られた数学的結果を数理疫学等を通して現実社会へ応用することは,社会科学や公衆衛生の研究にも大いに寄与するものです.しかしながら現象を記述するエージェント・ベースド・モデルやそれのスケーリング・リミットを表す関数方程式の多くは master equation と類似の形をしていることが知られています.master equation は統計力学にその起源を持つ非線形偏微分積分方程式ですが,その名前の通り統計力学の基礎方程式中の基礎方程式と言えます.しかし,その数学的構造は,まだ十分に研究されているとはいえません.数理科学の新たな挑戦を必要とするフロンティアであると言えます.このようなことから,エージェント・ベースド・モデルを中心とする離散力学系の計算機シミュレーション技法や連続力学系の数理解析的手法の応用に関心を持つ学生を募ります.希望者は常微分方程式論,偏微分方程式論,数値解析,及びC言語の基礎を修得していることが望ましいと考えますが,これらの分野の知識が不十分であっても,数理モデルに関心をもつ諸君を歓迎したいと思います.