数理工学分野数理解析講座の大学院前期課程の英語による講義について

この文章を読んでいる諸君は,来年4月から数理工学分野の大学院生として講義を受けることなっていることと思います.諸君らは数理工学のホームページや先輩や先生達から話を聞いて知っていることと思いますが,数理工学分野の前期課程の講義の多くが英語によってなされます.この事実を知ったとき思わず心の中で「エー!?」と叫んだ諸君が多くいることは容易に想像がつきます.大学院レベルの数学や物理学を理解するだけでも精いっぱいなのに,「それを英語で理解するなんて!」と思っている諸君は多いことでしょう.しかし安心して下さい.海外での研究生活を経験している先生が多いと言っても所詮は教える教員達も英語を母国語としない人間です.英語力はたかだか知れています.それでも講演や論文の発表は英語でなんとかやっていけるものなのです.先ずは英語で数学や物理学を学ぶということへの恐怖心を克服しましょう.

偉大な数学者である伊原康隆先生の著書「志学数学」を引用します.この書籍は数学の研究を志望する若い諸君のために書かれた研究を進める上での重要な心構えやノウハウについて書かれた本です.数学の研究を志すなら是非読んで欲しい素晴らしい書物です.その中に数学英語の習得のために書かれた次の一節があります(pp.22-23).

・数学での国際共通語はただ一つ,broken Englishです.

・高校程度の英語(とくに基礎的な文法と発音)が自分のものになっていれば,あとは数学用語を正しく覚えればよい.

・数学で使われる英単語はごく限られたものです.今の段階から数学のよい本を英語で読んで基礎用語とその使い方に徐々に慣れておけば,一,二年でかなりの文章を自分でも書けるようになるでしょう.

どうですか?少しは勇気が湧いてきましたか?日本人の数学者が書いた論文の英文の多くは,実際はネイティブスピーカーから見れば,随分とぎくしゃくしたたどたどしいbroken Englishであることを是非知ってください.もちろんfluentな英文が書けたり話せたりするに越したことはありませんが,数学で使われる基礎的な英単語をマスターすればbroken Englishであっても十分なコミュニケーションが可能になるのです.初学者は先ずその段階から出発すべきであることを,伊原先生は著書の中で言っておられるわけです.

どうも英語を話すのが苦手だという諸君は多いと思います.でも少し考えてみてください.インド人の英語はインド人特有の発音があり,イタリア人の英語はイタリア人特有の発音があります.彼等の発音はネイティヴ・イングリッシュとは全然違うわけですが,ぜんぜん気にしていないようですし,それで充分英語として通用しています.イタリア語は日本語と同じく母音を明晰に発音しますから,イタリア人がネイティヴ・イングリッシュのような発音をするのは難しいのだと思われます.日本人の場合も同じで、ネイティヴ・イングリッシュのような発音をするのは,一般的には無理があります.先ず,発音を気にすることをやめれば,必ず英語を話せるようになります.日本人はジャパニーズ・イングリッシュで明晰に発音することを心がければ,その英語で充分世界に通用します.どうか自分のジャパニーズ・イングリッシュに自信を持って下さい.

数学の講義は分野によって細かな違いはありますが,概ね次のような構成になっていることに諸君らは既に気がついていると思います.

1.数学的な概念の由来の説明,数学的な概念の背景説明.

2.数学的な概念の定義

3.補題,命題,定理の紹介

4.補題,命題,定理の証明

5.定理の応用の紹介

今年度は教わる諸君らは勿論初めての経験ですが,教える我々も初めての経験です.そこで今年度はこれらの講義プロセスのうち,数学の核と言うべき2,3,4の三つのプロセスを英語で講義したいと思います.

数学英語の基本的な語法は,「数学のための英語案内」にコンパクトにまとめられています.また上智大学の現代GPのホームページの資料も読んでみてください.数学で使う英語は高校で習う文法さえ分かっていれば十分に理解できる簡単なものであることを知って諸君らは驚くでしょう.是非今から読んでみてください.

さあ,4月からともに頑張りましょう!