胎蔵(界)曼荼羅は大日経を典拠とし解釈を広げ三句すなわち菩提心・大悲・方便を覚りの道標をとして図形化し慈悲の完成を顕すと言う、また空海の著作「十住心論」(空海注3参照)を視覚に訴えたものが胎蔵界曼荼羅と言える、但し経典とは尊数及び呼称に相違がある。
大日経は理論編と実践編に分かれており理論編から作られたと言う、正式名称は「
胎蔵界曼荼羅の正式名称は「大悲胎蔵生曼荼羅」と言い、真言密教では本来の略称は
胎蔵生曼荼羅の中心である
胎蔵界曼荼羅の範疇には「阿闍梨
曼荼羅は当初蓮華形や円形であったが中国に招来される過程に於いて現在の形態となる、源流は仏部(中台八葉院)・蓮華部・金剛手部の三部で構成されていたとも言われ密教の興隆により、仏部が釈迦如来から大日如来に変更されたとされる、従って周囲に従う菩薩は顕教からの金剛手菩薩、観音菩薩、弥勒菩薩、普賢菩薩、文殊菩薩である、これに地蔵院の地蔵菩薩と除蓋障院の除蓋障菩薩を加えて密教の八大菩薩が構成される。
曼荼羅の胎蔵界曼荼羅編を参照願います。
胎蔵曼荼羅は409 尊・12の院により構成されており以下のようになるが中台八葉院を中心に縦のラインで智慧を表現し横のラインに於いて慈悲を現しているとされる、下記に十二院の概略説明を記述するが経典と尊名の相違が場合は原図曼荼羅を優先した。
1,中台八葉院―深紅に塗られた八葉の蓮弁の中心に描かれる主尊は
・発心の徳と菩提心を起こさせ宝物で作られた幢(旗)印を持つ宝幢如来(与願印よがん)
・修行の徳と菩提の華を開き汚れなき開敷華王如来(
・菩提の徳と慈悲の光が無限の慈悲を示す無量寿如来(禅定印)
・涅槃すなわち覚りと執着を滅する法音を響かせて導く天鼓雷音如来(
2,遍智院(佛心院)中台八葉院の上に位置している、遍智とは総てを知る智を意味する、貪・瞋・痴すなわち煩悩の闇を照らし魔を超越した諸仏心印とも言われる△三角火輪(経典では上下逆の記述▽)を描いた一切如来智印を中心に、向かって右から
・二十臂に杖や輪を持つ
・剣と宝珠を
・左に諸仏を生み出した
・
3, 金剛手院ー金剛部院・薩凱院とも言い、付法八祖の第二祖である金剛薩埵、を主尊として33尊を配し佛の智慧すなわち大智の徳を著わし、煩悩を打破する金剛杵や剣を手にしている、三列七段構成、21尊の理智的な相をした菩薩の内最下段右で障害の鎮魂を担当する
右上部から下部へ・発生金剛部菩薩 ・
上記の内「大日経具縁品」於ける諸尊は・金剛手持金剛菩薩・持金剛峰菩薩・憤怒月黶菩薩・金剛鎖菩薩の5尊で多くは秘密曼荼羅品から引用さ
4, 蓮華部院―観音院とも言い大日如来の大悲救済示す、大日経と尊数に相違はあるが聖(しょう・正)観音菩薩を主尊に蓮華を持ち慈悲を表した如意輪観音・不空羂策観音等37尊を配置するが「大日経具縁品」於ける諸尊の記述は・耶輸陀羅菩薩 ・大勢至菩薩 ・観音菩薩 ・
蓮華部発生菩薩 ・大勢至菩薩 ・毘倶胝菩薩 ・奉教使者 ・聖観音菩薩 ・蓮華軍荼利 ・多羅菩薩 ・多羅使者 ・大明白身菩薩 ・蓮華部使者 ・馬頭観音菩薩 ・大随求菩薩 ・蓮華使者 ・薩凱婆大吉祥菩薩 ・耶輸陀羅菩薩 ・使者 ・如意輪観音 ・宝供養使者 ・大吉祥大明菩薩 ・
下図に使者・童子は明示してありません。 (蓮華部院の尊像は仏像図典)。
5, 持明院(五大院)― 中台八葉院の真下に位置し五大院とも呼ばれ経典では大日如来の持明使者として勝三世明王と不動明王の2尊が記述されている、梵語のvidyā ヴィドラー(明らかに)を意味する、真言・陀羅尼を有する者即ち智慧を持つ者を意味すると言われる、東寺の羯磨曼荼羅は仁王教からの引用とされるが持明院を参考にして空海の新たな解釈と考えたい、中央に
般若菩薩は梵語のprarṅāプラジューニャでバーリ語の音訳でpaṅṅāバンニャーから来ている、漢訳を慧と言い、和訳では見識・真実の智慧とされ覚りの母胎である、また般若菩薩は般若心経の根幹となる菩薩である、空海は著書・般若心経秘鍵に於いて般若経典600巻の要諦説を否定し般若菩薩の真言とする、即ち「大般若菩薩の大心真言三摩地法門なり」と言う。 但し般若菩薩は大日経には記述がなく院の中央は阿闍梨が曼荼羅を観想する場所である。
6, 虚空蔵院―大日如来の救いが虚空の如く広い範囲に及ぶとされ、虚空蔵菩薩を中央に配し両端に大きく、右に向かって16面に煩悩を断ち切る108臂の金剛蔵王菩薩、左に27面の千手千眼観音の両菩薩の他、十波羅蜜菩薩10尊、菩薩10尊、飛天族6尊の等29尊を配し、全ての徳を生み出す働きを示す、大日経に於いては虚空無垢菩薩・虚空慧菩薩・清浄慧菩薩・行慧菩薩・安慧菩薩のみが記述されている、曼荼羅には他に檀波羅蜜菩薩・戒波羅蜜菩薩・忍辱波羅蜜菩薩・精進波羅蜜菩薩・禅波羅蜜菩薩などが描かれる、因みに十波羅蜜菩薩とは六波羅蜜に・方便・願・力・智を加えた尊像である。
7, 釈迦院―トラーナに囲まれた説法印の釈迦如来を中心に右に観自在菩薩・左に虚空蔵菩薩・左下に無能勝明王・右下に無能勝妃と実在したと言われる釈迦の十大弟子の内、
原図曼荼羅では遍智院 ・金剛手院 ・蓮華部院の上部に位置するが大日経や大日経疏では最外院に配置されており曼荼羅に於ける釈迦如来の存在感は著しく低い。
8,蘇悉地院―功徳・成就の完成を意味し十一面観音菩薩・孔雀王母・不空供養菩薩・不空金剛菩薩・金剛軍荼利菩薩・金剛明王等8尊を配するが経典に於いては蘇悉地院の呼称は無く虚空蔵院に統括されている。
9,文殊院―釈迦院の上、最下院の下に位置し、文殊師利菩薩を中心に真実の姿を示し智慧を象徴される菩薩・妙吉祥菩薩・光網菩薩・宝冠菩薩・無垢光菩薩・月光菩薩・妙音菩薩等に使者衆を含めて25尊で形成される、文殊院には小さく観音菩薩と普賢菩薩他2尊が描かれている、経典に於いては五尊のみ記述されている、文殊院も大日経具縁品には文殊菩薩を中心に・
10, 地蔵院―功徳を表す宝珠幢と如意宝珠を持つ地蔵菩薩を主尊に9尊を配し全ての救済を表しているが、経典には宝印手菩薩・宝手菩薩・地蔵菩薩・宝処菩薩・持地菩薩・堅個意菩薩の六尊である。
原図曼荼羅に於いては地蔵菩薩は日本に見られる僧形ではなく菩薩形で宝珠幢・如意宝珠を手にしている、描かれる九尊の内訳は上から
11、
原図曼荼羅の九尊の内訳は上から
12、
その他に・帝釈天・持国天、増長天(四天王)・梵天・婆藪仙など二十八部衆の一部等が置かれている。
注1、阿弥陀如来と無量寿如来を同尊として記述しているが異論もある。
注2、
別図参照 胎蔵界曼荼羅の主な尊像 1・大日如来 2・
左図は頭脳5で作図しました。
蓮華部院と金剛手院の尊名
蓮華部院(観音院) 右に中台八葉院 遍知院 持明院
参考 以下の蓮華部・金剛手院は東京都練馬区南田中4-15-24 慈雲山 曼荼羅寺 観蔵院 曼荼羅図典(大法輪閣)参照
|
被葉衣菩薩 |
蓮華部発生菩薩 |
|
|
白身観自在菩薩 |
薩埵婆大吉祥菩薩 |
|
|
豊財菩薩 |
耶輸陀羅菩薩 |
毘倶胝菩薩 |
|
水吉祥菩薩 |
大吉祥大明菩薩 |
|
|
大吉祥変菩薩 |
大吉祥明菩薩 |
大明白身菩薩 |
|
白吉祥変菩薩 |
寂留明菩薩 |
金剛手院 左に中大八葉院 遍知院 持明院
|
発生金剛部菩薩 |
虚空無垢持金剛菩薩 |
金剛輪持菩薩 |
|
金剛鈎女菩薩 |
金剛牢持金剛菩薩 |
金剛説菩薩 |
|
金剛手持金剛菩薩 |
忿怒持金剛菩薩 |
懌悦持金剛菩薩 |
|
虚空無辺超越菩薩 |
金剛牙菩薩 |
|
|
持金剛峰菩薩 |
金剛鎖菩薩 |
離戯論菩薩 |
|
金剛拳菩薩 |
金剛持菩薩 |
持妙金剛菩薩 |
|
忿怒月黶金剛菩薩 |
持金剛利菩薩 |
大輪金剛菩薩 |
除蓋障院 上から 悲愍慧菩薩 破悪趣菩薩 施無畏菩薩 賢護菩薩 除蓋障菩薩 慈発生菩薩 慈愍菩薩 拆諸熱悩菩薩 不思議慧菩薩(日光菩薩)
地蔵院 上から 除一切憂冥菩薩(除憂冥菩薩) 不空見菩薩 宝印手菩薩 宝光菩薩 地蔵菩薩 宝手菩薩 持地菩薩(堅意菩薩) 堅固深心菩薩 日光菩薩(除蓋障菩薩)
2005年2月11日調整 2008年6月6日各院説明追加
仏像案内 寺院案内
2005年12月23日除蓋障院尊像内訳 2009年2月15 7月10日その他の曼荼羅加筆